花粉症中心ー性鼻炎1
花粉症を中心としたアレルギー性鼻炎について
(财)航空医学研究センター
耳鼻咽喉科主任 石井正则
(东京厚生年金病院 耳鼻咽喉科)
【 はじめに 】
毎年,3月~4月は,テレビでも天気予报で花粉情报が放送され,花粉症が大きな话题にな
るほど年中行事になっています.
航空机会社の方にも多くの花粉症の患者さんがいますし,実际にあなたのまわりにもこの季节
を忧郁に过ごされている方もいらっしゃると思います.
花粉症の花粉は,スギが代表ですが,现在わかっているだけで100种近くの花粉によるア
レルギー性鼻炎が知られています.とくにヒノキ,オオガワエリ,ハルガヤ,ブタクサなどの
スギ以外の花粉症の频度も高くなっています.
ヒノキの花粉症はスギより飞散する时期が1ヶ月ほど遅れ,4月の初旬から中旬にかけて多
く飞び,5月の年休明けごろに终息します.オオガワエリというのは,闻き惯れない名前と思
いますが,この植物は,昨年に羽田空港の空き地にもはえていました.ちょうどツツジの花が
咲き始める顷に生えてくるイネ科の雑草です.ハルガヤも空き地やお堀端に生育しているイネ
科の植物です.ブタクサは,夏の终わりごろから秋口にかけ黄色い花を咲かせる雑草です.い
ずれもが,都心でも地方でも日常に见かける植物なのです.
今回は,花粉症を中心にアレルギー性鼻炎をお话するとともに,航空机乗员のみなさんのご
协力によって得られた航空机乗员の花粉症の现况について述べます.
1.花粉症について
花粉症の症状は,くすりの宣伝ではありませんが,「くしゃみ,はなみず,鼻づまり」,が
有名な3大症状です.これ以外に目のかゆみが强くなり,涙目がとれないといった诉えも有名
です.しかし,よく患者さんの诉えに耳を倾けると,のどちんこ(正确には口盖垂)の裏あた
りのかゆみやヒリヒリ感を诉えたり,微热がでて风邪かと思っていたら実は花粉症であったと
いう例も珍しくありません.
そこで,どのように诊断するかというと,まず鼻内を肉眼や内视镜で観察するだけで,鼻粘
膜の高度な発赤や浮肿(水肿れ)や苍白な色をした病的な鼻粘膜でアレルギー性鼻炎を诊断で
きる场合があります.しかし正确に何の抗原によるアレルギー性鼻炎かどうかの判定は,やは
りアレルギー検査を実施するしかないです.
2.アレルギー検査について
古くからおこなわれている検査は皮肤反応検査です.これは抗原の入ったアレルゲンエキスを
皮肤に入れてどのような反応が起こるかを観察する方法です.具体的には,エキスを皮肤に1滴
2
たらして,その皮肤を针でひっかいて反応を调べる検査です.同时に短时间(15分~20分)
で数种类のアレルゲンを调べられますが,反応の强さを一定に保つことができないために反応の
强さを比较できない欠点があります.
皮内テストは,アレルゲンエキスを直接皮肤に微量(0.02ml)に注射して起こる皮肤の反応を
みる方法です.これももしアレルギーがあれば15分から20分でジンマ疹のような反応が皮肤
に起きてきます.スクラッチテストより锐敏な方法ですが,腕や背中の皮肤に何カ所も同时に注
射する必要があるために,患者さんに少し负担をしいる可能性がありますし,花粉症の季节では
かなり混んだ外来となるので,多数の人に同时にすることは难しい现状があります.しかし検査
法としては确実で信頼性が高いのも事実です.
血液による検査は,アレルギー反応によって体内にできた特异的IgE抗体を测定する方法(血
性抗体検査)を用います.数年前まではアイソトープを用いたRAST法が一般的でしたが,アイ
ソトープという放射性同位元素の问题やコストの点などで,现在ではMAST法やCAPシステム
やアラスタット法などの新しい検査法が普及してきています.
これらの検査から,最近ではスギ花粉症の40%以上の人が家にいるチリダニ(コナヨウヒダ
ニやヤケヒョウヒダニなど)にアレルギーをもつことが判ってきました.このダニのアレルギー
があった场合には,鼻症状が一年中続きます.とくに衣替えのシーズンにチリダニが増加するた
めに,その时期にあわせて症状が増悪します.
抗原:アレルギーの原因になる物质,アレルゲンという.
抗体:抗原によって人体で生成される抗原に対する免疫物质
lgE:免疫反応を担う血液中のたんぱく质
3.花粉症が増えた原因は
さて,スギ花粉症がなぜ増加してきたかという理由はいくつかの说があげられています(表1).
そのひとつは,スギの花粉そのものの増加です.これは第二次世界大戦で日本中の山にあった
森林が荒廃したために,成长が速いといわれているスギを日本中の山々に数多く植林し,その结
果,20~30年たったスギから大量の花粉が飞散しているという事実です.とくに外国からの
木材が安く输入されてきてから,スギ林の手入れをしなくなった地域が増してきたために,スギ
の种を守ろうとする本能のためか,手入れをしてるスギよりも多量に花粉をまき散らしているこ
とが知られております.
1.スギの花粉そのものの増加 4.家屋の西欧化(ダニの増加)
2.寄生虫の激减 5.大気汚染(ディーゼルの排気ガス)
3.食生活の変化(肉食の増加) 6.ストレス
表-1
これ以外に兴味深い报告があります.それは寄生虫の激减に関连があるという说です.京都に
あるニホンザルの研究所には戦后しばらくしてからのニホンザルの血液が冻结保存されていま
3
す.それを现在から过去にさかのぼって血清のスギのIgE抗体を调べたところ,戦后まもなく
のころは,サルにはほとんどスギに対する抗体は认められませんでした.ところがある时期をす
ぎてからはニホンザルにもスギ花粉症が増加しているのです.その时期とはサルに寄生虫を駆除
してからだったのです.寄生虫が体内にいると血清中のIgEが増加します.この増加したIg
Eがスギの抗原抗体反応を抑制してスギに対して过敏性を示さないと思われています.しかし寄
生虫が駆除されるとこの抑制がなくなり急激にスギに対して过敏性を示し,スギ花粉症が出现し
てきたのではないかというのです.人间の场合も,戦后日本では卫生面の管理として积极的に回
虫や蛲虫の駆除をおこなってきました.その时期と相対する関系でスギの花粉症の増加している
のです.だからといっても寄生虫に感染すればよいというわけではありません.アレルギーの専
门の研究者には,この现象から非特异的IgEを増加させる方法を検讨しており,この方法によ
りスギ花粉症を制御しようという研究が実际におこなわれています.
エイコサペンタエン酸という物质がアレルギー反応に必要なロイコトリエンと类似であり,こ
の摂取でアレルギー反応が軽快することがわかっています.このエイコサペンタエン酸は,サン
マやイワシに多く含まれています.つまり食生活が鱼食から肉食に代わったことが花粉症の増加
につながったという说もあります.
このほか,家屋の西欧化により家の中にチリダニが増加し,それがアレルギー反応を引き起こ
す下地をつくり花粉症が増加したという说も有力です.
1980年前まで都会と地方ではスギ花粉症の発症率に违いが有意に违いがありましたが,现
在のところ,その差はなくなってきており,动物実験や疫学的调査から,空中に浮游する物质(浮
游粒子物质)が花粉症の感受性を高めている可能性が高いと言われています.
自动车の出す排気ガスがアレルギーの抗原抗体反応を著しく増大させることが検证されてい
ます.とくに大気中の浮游粒子物质の35~80%もしめるディーゼルの排気ガスの微粒子が花
粉症増加の责任物质の第一候补として考えられています.このため环境庁や运输省规制にのりだ
してきており,近い将来,排気ガス规制が重要な役割をはたすことが期待されています.
喘息やアトピー性皮肤炎などのアレルギー疾患では,精神的なストレスや疲労や不眠などで症
状の増悪が起こることがよく知られています.花粉症でもストレスや心身の疲労で鼻の过敏性が
増します.花粉症の患者の自律神経系の活动を调べると副交感神経の亢进があり,自律神経の不
安定な状态が起きています.现代の生活では,不眠や心身の疲労やストレスのかかった状态が続
くことがあり,そのような状况は花粉症を含めたアレルギー性疾患の増加を引き起こす因子にな
っている可能性があります.
4.花粉症の治疗(表2)
治疗は,スギやその他の花粉の飞散时期がピークのときは,正直に申し上げますと,最近のブ
ームになっている眠気の出ない抗アレルギー薬はほとんど无効に近いのが现状です.中には効果
のある方も,スギの量が増えた昨年度には,効果が全灭に近いといっていいほど,この抗アレル
ギー薬の有効性を疑わせる结果となりした.
したがって花粉の量が多く飞んでいるときには,ステロイド剤を含んだ点鼻薬を集中的に短期
间使用して,鼻内のアレルギー反応で肿胀した粘膜を抑制し,症状が軽快した状态で抗ヒスタミ
ン薬や抗アレルギー薬に切り替えることをおすすめします.あるいは花粉症の季节に入る前にあ
らかじめ抗アレルギー薬を予防的に内服することが有効ですが,内服の时期は2月に入る前の顷
4
より开始することが必要です.
1.抗原(花粉)の除去 回避 マスク,メガネ,空気清浄器,転地疗法
2.薬物疗法(抗アレルギー剤,抗ヒスタミン剤,ステロイド剤)
3.手术疗法(下甲介粘膜切除,レーザー疗法
4.减感作疗法(免疫疗法)
5.心身の锻练
6.その他(局所温热疗法)
表-2
ステロイドの入った薬剤を使用することに抵抗を示す人もいますが,最近では喘息の発作も含
めアメリカではアレルギー発作に対して积极的に局所のステロイド剤を使用した法が治疗効果
や安全性が高いことが判ってきております.日本でも最近はスギの飞散量が多いときには局所の
ステロイド剤を积极的に使う倾向にあります.
花粉の飞散は,风の强い日や晴天の日にはよく飞ぶことが知られていますが,それ以外に,雨
の降った日の翌日でからりと晴れ上がるときわめて多量の花粉飞散がみられることが多いよう
です.一日のうちでは,ふつうは昼间に多く飞びます.これら花粉飞散状况を现在ではテレビや
新闻でわかるようになっていますし,最近ではファックスやインターネットでも最新の花粉の飞
散情报を得ることができます.あるコンビニでは,レシートにそのコンビニの地区の飞散状况を
印刷するサービスをおこなっているところもあります.
そこで,それらの情报を有効に利用して,多量飞散のときには外出をさけ,外出の际には花粉
用のマスクをつけてでたり,帰宅したときには髪や衣服についた花粉を落としてから家に入るな
どの注意が必要になります.また大量飞散が予想されるときには家の窓をできるだけあけないよ
うにすることです.実际に100个以上の多量飞散があったときに窓を开けない部屋では花粉は
ほとんど検出されなかった报告があります.
そこで自卫手段としては,飞散が多量に飞ぶ予想があるときには,家屋に花粉を入れないよう
に,可能な限り窓を开けず,ドアの开闭时间を短くして,そして帰宅前に花粉を落とすように注
意を払うようにすべきです.
ストレスが鼻症状の増悪をきたすことが知られています.そしてそれは自律神経系の不安定な
状况を作り出すこともわかっています.そこで,心身の疲労をできるだけ少なくし,睡眠を十分
とるようにし,ストレスに対して心身を锻えることも日顷の対策のひとつになります.
ジョギングは心身の锻錬にはよい方法ですが,花粉の飞散时期には屋外で症状の増悪をきたす
ことがあります.水泳は,皮肤を冷水で刺激し自律神経を活性化することが知られていますので,
心身の锻錬としては望ましい体力づくりと思われます.
このほか,最近は鼻腔に対して局所温热疗法があります.これは,43℃の水蒸気を细かい粒
子にして吸入する治疗法です.家庭で简単にでき,连日使用することにより,感冒やアレルギー
性鼻炎にも有効であるといわれています.花粉症にも症状が軽快することが知られています.现
在,エーザイのスカイナースチームやその他の会社から数种类発売されています.
5.航空机乗员におけるスギ花粉症の现况
花粉症の患者は,1963年にはじめてスギの花粉症が报告されてから,この30年间で急激な増
5
加を认めています.たとえば,1986には,东京地区の20~39歳におけるスギ特异IgE抗体の保
有率は约30%となり,1988年の调査では,関东地方で54.7%がスギ特异IgE抗体を保有していま
した.そのうち,约47.6%がスギ花粉症罹患者でした.また,1990の调査では,892名の大学生
を対象にスギ特异IgE抗体保有率を调査したところ,27%で特异抗体阳性となり,12%の罹患率
を示していました.1995年は戦后最大のスギ花粉の大量飞散の年となり,多くの患者が花粉症状
に悩まされました.现在,成人の约10~20%の割合で春に花粉症の症状を示すといわれてい
ます.
これらの调査により抗体保有率や罹患率には差がありますが,わが国でスギ花粉症患者が増加
が明らかにあることは事実です.
そこで,航空医学研究センターでは航空机乗员の身体検査の中で,乗员の中にも花粉症状を诉
えるが少なからずいるために,航空机乗员におけるスギ花粉症の现况について把握する目的で,
アンケート调査を実施しました.
调査は,J社およびA社の航空机乗员2379名を対象に,1995年8月15日より1996年1月12
日までアンケート调査を行いました.そのときの方法としては,航空医学研究センターに身体検
査受诊时にアンケート用纸を配布し,希望者に记载を依頼しました.
アンケート回答者の総数は2335名でした.回答者は,全员男性であり,有効回答率は98.5%と
かなり高い回答率でした.アンケート回答者2335名の年齢は,24歳から61歳で,47歳が最も
多く平均年齢は44.0歳でした(図1).
以下に回答していただいた结果をここにあげます.
1) 花粉症の症状もった人の割合
回答者(2335名)の中で,春の花粉症の时期に症状があると回答した人は,613名で,26.3%
でした(図2).
6
また,春の花粉症の时期に症状がある人(613名)の平均年齢は43.4歳でした.
この时期に症状の无い人の平均年齢は44.2歳でした.花粉症の症状を持つ人と症状のない人の
集団にはとくに有意の差はありませんでした(図3).
2) 花粉症の症状の内容
花粉症のそれぞれの症状の割合を见ると,図4のようにくしゃみ,鼻汁过多,鼻闭,鼻掻痒感,
と症状のほぼ3分の4が鼻の症状でした.とくにくしゃみ,鼻水で约半数以上(51.5%)を占め
ていました.次に多いのが眼の症状で,眼のかゆみ(眼掻痒感)が24.7%でした.(図4)
7
さらに,鼻の症状と眼の症状の组み合わせのパターンをみると,鼻症状と眼症状を伴う人が花
粉症の症状をともなう人の全体で65.4%でした.その次に鼻症状のみ,眼症状のみの顺となりま
した(図5).これらは一般の患者さんととくに大きな违いはありませんでした.
3) 治疗状况
花粉症の症状を伴う人の治疗状况について调査しました.
症状を认める人613名のうち,53.2%が何らかの治疗を行っていたと答えていました(図6).
さらに,症状别に治疗の有无をみると,鼻症状と眼症状を伴う人は60.1%が治疗を受けていまし
た.眼症状のみでは48.5%が,さらに鼻症状のみの场合は37.1%が治疗を行っていました.
8
この倾向は一般の患者さんでは,鼻の症状を持つ人に治疗を受ける倾向が高いのですが,眼の
症状のみで受ける人の割合が航空机乗员に约半数と高いのは,やはり职业上,眼の健康に注意を
払う必要があることを示唆しているのかもしれません.なお,治疗を受けていなかった人の理由
としては,症状が軽かったからとする人が94.2%を占め,その他では我慢した(4.5%)などであ
りました(図7).
治疗の状况としては,医疗机関を受诊した人が45.2%,市贩薬を使用した人が41.8%で,医疗
机関を受诊してさらに市贩薬を使用した人は33.8%でした(表3)
市贩薬使用
ハイ イイエ 计 医
疗 ハイ 33.8%11.4%45.2%
9
イイエ 8.0%46.8%54.8% 机
関 计 41.8%58.2%100%
表-3 有症者治疗状况 (N=613)
医疗机関受诊者の治疗内容としては,点鼻薬(38.3%),点眼薬(27.8%),内服薬(25.8%)
でした(図8).つまり局所の治疗薬が半数以上になりますが,四分の一の方は内服薬を使用し
ているということです.
市贩薬使用では,内服薬が最も多く(37.4%),次いで点眼薬(34.0%),点鼻薬(26.5%)の
顺でした(図9).
以上の内容をまとめますと,今回のアンケート调査结果から,航空机乗员には春の花粉症の时
期に症状を有する人が约4人に1人の割合(约25%)で认められました.この割合を仮にスギ
花粉症の有症率とするならば,一般の集団(10~20%)と比较しても决して少なくはありま
せんでした.ただし,今回の调査はあくまでもアンケート调査のみの结果であるため,症状の中
には感冒やハウスダストアレルギーあるいはその他の花粉症症状が含まれている可能性があり
10
あます.可能であれば,血清中のスギ特异IgE抗体価の测定等をあわせて行うことが実体の把握
になると思われます.また,花粉症の症状のある人では,症状の程度には个人差がありますが,
治疗を必要とする者が少なからずいると思われました.
ここで注意すべきことは,治疗として局所の点鼻薬や点眼薬は眠気とか覚醒を低下させるもの
はありませんが,アレルギー性鼻炎の内服薬はほとんどのものが眠気をきたします.したがって,
当然,搭乗の24时间以内のアレルギー性鼻炎の内服薬は,搭乗前の服用制限の対象薬になると
いうことです.ぜひこの点は留意していただきたいと考えます.
6.参考文献
花粉症 からだの科学 193巻 26~179;1997
スギ花粉症 治疗 79巻 6~139;1997
アレルギー性鼻炎 花粉症の诊断と治疗 メディカルレビュー社 1997
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花粉症を中心としたアレルギー性鼻炎について
(财)航空医学研究センター
耳鼻咽喉科主任 石井正则
(东京厚生年金病院 耳鼻咽喉科)
【 はじめに 】
毎年,3月~4月は,テレビでも天気予报で花粉情报が放送され,花粉症が大きな话题にな
るほど年中行事になっています.
航空机会社の方にも多くの花粉症の患者さんがいますし,実际にあなたのまわりにもこの季节
を忧郁に过ごされている方もいらっしゃると思います.
花粉症の花粉は,スギが代表ですが,现在わかっているだけで100种近くの花粉によるア
レルギー性鼻炎が知られています.とくにヒノキ,オオガワエリ,ハルガヤ,ブタクサなどの
スギ以外の花粉症の频度も高くなっています.
ヒノキの花粉症はスギより飞散する时期が1ヶ月ほど遅れ,4月の初旬から中旬にかけて多
く飞び,5月の年休明けごろに终息します.オオガワエリというのは,闻き惯れない名前と思
いますが,この植物は,昨年に羽田空港の空き地にもはえていました.ちょうどツツジの花が
咲き始める顷に生えてくるイネ科の雑草です.ハルガヤも空き地やお堀端に生育しているイネ
科の植物です.ブタクサは,夏の终わりごろから秋口にかけ黄色い花を咲かせる雑草です.い
ずれもが,都心でも地方でも日常に见かける植物なのです.
今回は,花粉症を中心にアレルギー性鼻炎をお话するとともに,航空机乗员のみなさんのご
协力によって得られた航空机乗员の花粉症の现况について述べます.
1.花粉症について
花粉症の症状は,くすりの宣伝ではありませんが,「くしゃみ,はなみず,鼻づまり」,が
有名な3大症状です.これ以外に目のかゆみが强くなり,涙目がとれないといった诉えも有名
です.しかし,よく患者さんの诉えに耳を倾けると,のどちんこ(正确には口盖垂)の裏あた
りのかゆみやヒリヒリ感を诉えたり,微热がでて风邪かと思っていたら実は花粉症であったと
いう例も珍しくありません.
そこで,どのように诊断するかというと,まず鼻内を肉眼や内视镜で観察するだけで,鼻粘
膜の高度な発赤や浮肿(水肿れ)や苍白な色をした病的な鼻粘膜でアレルギー性鼻炎を诊断で
きる场合があります.しかし正确に何の抗原によるアレルギー性鼻炎かどうかの判定は,やは
りアレルギー検査を実施するしかないです.
2.アレルギー検査について
古くからおこなわれている検査は皮肤反応検査です.これは抗原の入ったアレルゲンエキスを
皮肤に入れてどのような反応が起こるかを観察する方法です.具体的には,エキスを皮肤に1滴
2
たらして,その皮肤を针でひっかいて反応を调べる検査です.同时に短时间(15分~20分)
で数种类のアレルゲンを调べられますが,反応の强さを一定に保つことができないために反応の
强さを比较できない欠点があります.
皮内テストは,アレルゲンエキスを直接皮肤に微量(0.02ml)に注射して起こる皮肤の反応を
みる方法です.これももしアレルギーがあれば15分から20分でジンマ疹のような反応が皮肤
に起きてきます.スクラッチテストより锐敏な方法ですが,腕や背中の皮肤に何カ所も同时に注
射する必要があるために,患者さんに少し负担をしいる可能性がありますし,花粉症の季节では
かなり混んだ外来となるので,多数の人に同时にすることは难しい现状があります.しかし検査
法としては确実で信頼性が高いのも事実です.
血液による検査は,アレルギー反応によって体内にできた特异的IgE抗体を测定する方法(血
性抗体検査)を用います.数年前まではアイソトープを用いたRAST法が一般的でしたが,アイ
ソトープという放射性同位元素の问题やコストの点などで,现在ではMAST法やCAPシステム
やアラスタット法などの新しい検査法が普及してきています.
これらの検査から,最近ではスギ花粉症の40%以上の人が家にいるチリダニ(コナヨウヒダ
ニやヤケヒョウヒダニなど)にアレルギーをもつことが判ってきました.このダニのアレルギー
があった场合には,鼻症状が一年中続きます.とくに衣替えのシーズンにチリダニが増加するた
めに,その时期にあわせて症状が増悪します.
抗原:アレルギーの原因になる物质,アレルゲンという.
抗体:抗原によって人体で生成される抗原に対する免疫物质
lgE:免疫反応を担う血液中のたんぱく质
3.花粉症が増えた原因は
さて,スギ花粉症がなぜ増加してきたかという理由はいくつかの说があげられています(表1).
そのひとつは,スギの花粉そのものの増加です.これは第二次世界大戦で日本中の山にあった
森林が荒廃したために,成长が速いといわれているスギを日本中の山々に数多く植林し,その结
果,20~30年たったスギから大量の花粉が飞散しているという事実です.とくに外国からの
木材が安く输入されてきてから,スギ林の手入れをしなくなった地域が増してきたために,スギ
の种を守ろうとする本能のためか,手入れをしてるスギよりも多量に花粉をまき散らしているこ
とが知られております.
1.スギの花粉そのものの増加 4.家屋の西欧化(ダニの増加)
2.寄生虫の激减 5.大気汚染(ディーゼルの排気ガス)
3.食生活の変化(肉食の増加) 6.ストレス
表-1
これ以外に兴味深い报告があります.それは寄生虫の激减に関连があるという说です.京都に
あるニホンザルの研究所には戦后しばらくしてからのニホンザルの血液が冻结保存されていま
3
す.それを现在から过去にさかのぼって血清のスギのIgE抗体を调べたところ,戦后まもなく
のころは,サルにはほとんどスギに対する抗体は认められませんでした.ところがある时期をす
ぎてからはニホンザルにもスギ花粉症が増加しているのです.その时期とはサルに寄生虫を駆除
してからだったのです.寄生虫が体内にいると血清中のIgEが増加します.この増加したIg
Eがスギの抗原抗体反応を抑制してスギに対して过敏性を示さないと思われています.しかし寄
生虫が駆除されるとこの抑制がなくなり急激にスギに対して过敏性を示し,スギ花粉症が出现し
てきたのではないかというのです.人间の场合も,戦后日本では卫生面の管理として积极的に回
虫や蛲虫の駆除をおこなってきました.その时期と相対する関系でスギの花粉症の増加している
のです.だからといっても寄生虫に感染すればよいというわけではありません.アレルギーの専
门の研究者には,この现象から非特异的IgEを増加させる方法を検讨しており,この方法によ
りスギ花粉症を制御しようという研究が実际におこなわれています.
エイコサペンタエン酸という物质がアレルギー反応に必要なロイコトリエンと类似であり,こ
の摂取でアレルギー反応が軽快することがわかっています.このエイコサペンタエン酸は,サン
マやイワシに多く含まれています.つまり食生活が鱼食から肉食に代わったことが花粉症の増加
につながったという说もあります.
このほか,家屋の西欧化により家の中にチリダニが増加し,それがアレルギー反応を引き起こ
す下地をつくり花粉症が増加したという说も有力です.
1980年前まで都会と地方ではスギ花粉症の発症率に违いが有意に违いがありましたが,现
在のところ,その差はなくなってきており,动物実験や疫学的调査から,空中に浮游する物质(浮
游粒子物质)が花粉症の感受性を高めている可能性が高いと言われています.
自动车の出す排気ガスがアレルギーの抗原抗体反応を著しく増大させることが検证されてい
ます.とくに大気中の浮游粒子物质の35~80%もしめるディーゼルの排気ガスの微粒子が花
粉症増加の责任物质の第一候补として考えられています.このため环境庁や运输省规制にのりだ
してきており,近い将来,排気ガス规制が重要な役割をはたすことが期待されています.
喘息やアトピー性皮肤炎などのアレルギー疾患では,精神的なストレスや疲労や不眠などで症
状の増悪が起こることがよく知られています.花粉症でもストレスや心身の疲労で鼻の过敏性が
増します.花粉症の患者の自律神経系の活动を调べると副交感神経の亢进があり,自律神経の不
安定な状态が起きています.现代の生活では,不眠や心身の疲労やストレスのかかった状态が続
くことがあり,そのような状况は花粉症を含めたアレルギー性疾患の増加を引き起こす因子にな
っている可能性があります.
4.花粉症の治疗(表2)
治疗は,スギやその他の花粉の飞散时期がピークのときは,正直に申し上げますと,最近のブ
ームになっている眠気の出ない抗アレルギー薬はほとんど无効に近いのが现状です.中には効果
のある方も,スギの量が増えた昨年度には,効果が全灭に近いといっていいほど,この抗アレル
ギー薬の有効性を疑わせる结果となりした.
したがって花粉の量が多く飞んでいるときには,ステロイド剤を含んだ点鼻薬を集中的に短期
间使用して,鼻内のアレルギー反応で肿胀した粘膜を抑制し,症状が軽快した状态で抗ヒスタミ
ン薬や抗アレルギー薬に切り替えることをおすすめします.あるいは花粉症の季节に入る前にあ
らかじめ抗アレルギー薬を予防的に内服することが有効ですが,内服の时期は2月に入る前の顷
4
より开始することが必要です.
1.抗原(花粉)の除去 回避 マスク,メガネ,空気清浄器,転地疗法
2.薬物疗法(抗アレルギー剤,抗ヒスタミン剤,ステロイド剤)
3.手术疗法(下甲介粘膜切除,レーザー疗法
4.减感作疗法(免疫疗法)
5.心身の锻练
6.その他(局所温热疗法)
表-2
ステロイドの入った薬剤を使用することに抵抗を示す人もいますが,最近では喘息の発作も含
めアメリカではアレルギー発作に対して积极的に局所のステロイド剤を使用した法が治疗効果
や安全性が高いことが判ってきております.日本でも最近はスギの飞散量が多いときには局所の
ステロイド剤を积极的に使う倾向にあります.
花粉の飞散は,风の强い日や晴天の日にはよく飞ぶことが知られていますが,それ以外に,雨
の降った日の翌日でからりと晴れ上がるときわめて多量の花粉飞散がみられることが多いよう
です.一日のうちでは,ふつうは昼间に多く飞びます.これら花粉飞散状况を现在ではテレビや
新闻でわかるようになっていますし,最近ではファックスやインターネットでも最新の花粉の飞
散情报を得ることができます.あるコンビニでは,レシートにそのコンビニの地区の飞散状况を
印刷するサービスをおこなっているところもあります.
そこで,それらの情报を有効に利用して,多量飞散のときには外出をさけ,外出の际には花粉
用のマスクをつけてでたり,帰宅したときには髪や衣服についた花粉を落としてから家に入るな
どの注意が必要になります.また大量飞散が予想されるときには家の窓をできるだけあけないよ
うにすることです.実际に100个以上の多量飞散があったときに窓を开けない部屋では花粉は
ほとんど検出されなかった报告があります.
そこで自卫手段としては,飞散が多量に飞ぶ予想があるときには,家屋に花粉を入れないよう
に,可能な限り窓を开けず,ドアの开闭时间を短くして,そして帰宅前に花粉を落とすように注
意を払うようにすべきです.
ストレスが鼻症状の増悪をきたすことが知られています.そしてそれは自律神経系の不安定な
状况を作り出すこともわかっています.そこで,心身の疲労をできるだけ少なくし,睡眠を十分
とるようにし,ストレスに対して心身を锻えることも日顷の対策のひとつになります.
ジョギングは心身の锻錬にはよい方法ですが,花粉の飞散时期には屋外で症状の増悪をきたす
ことがあります.水泳は,皮肤を冷水で刺激し自律神経を活性化することが知られていますので,
心身の锻錬としては望ましい体力づくりと思われます.
このほか,最近は鼻腔に対して局所温热疗法があります.これは,43℃の水蒸気を细かい粒
子にして吸入する治疗法です.家庭で简単にでき,连日使用することにより,感冒やアレルギー
性鼻炎にも有効であるといわれています.花粉症にも症状が軽快することが知られています.现
在,エーザイのスカイナースチームやその他の会社から数种类発売されています.
5.航空机乗员におけるスギ花粉症の现况
花粉症の患者は,1963年にはじめてスギの花粉症が报告されてから,この30年间で急激な増
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加を认めています.たとえば,1986には,东京地区の20~39歳におけるスギ特异IgE抗体の保
有率は约30%となり,1988年の调査では,関东地方で54.7%がスギ特异IgE抗体を保有していま
した.そのうち,约47.6%がスギ花粉症罹患者でした.また,1990の调査では,892名の大学生
を対象にスギ特异IgE抗体保有率を调査したところ,27%で特异抗体阳性となり,12%の罹患率
を示していました.1995年は戦后最大のスギ花粉の大量飞散の年となり,多くの患者が花粉症状
に悩まされました.现在,成人の约10~20%の割合で春に花粉症の症状を示すといわれてい
ます.
これらの调査により抗体保有率や罹患率には差がありますが,わが国でスギ花粉症患者が増加
が明らかにあることは事実です.
そこで,航空医学研究センターでは航空机乗员の身体検査の中で,乗员の中にも花粉症状を诉
えるが少なからずいるために,航空机乗员におけるスギ花粉症の现况について把握する目的で,
アンケート调査を実施しました.
调査は,J社およびA社の航空机乗员2379名を対象に,1995年8月15日より1996年1月12
日までアンケート调査を行いました.そのときの方法としては,航空医学研究センターに身体検
査受诊时にアンケート用纸を配布し,希望者に记载を依頼しました.
アンケート回答者の総数は2335名でした.回答者は,全员男性であり,有効回答率は98.5%と
かなり高い回答率でした.アンケート回答者2335名の年齢は,24歳から61歳で,47歳が最も
多く平均年齢は44.0歳でした(図1).
以下に回答していただいた结果をここにあげます.
1) 花粉症の症状もった人の割合
回答者(2335名)の中で,春の花粉症の时期に症状があると回答した人は,613名で,26.3%
でした(図2).
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また,春の花粉症の时期に症状がある人(613名)の平均年齢は43.4歳でした.
この时期に症状の无い人の平均年齢は44.2歳でした.花粉症の症状を持つ人と症状のない人の
集団にはとくに有意の差はありませんでした(図3).
2) 花粉症の症状の内容
花粉症のそれぞれの症状の割合を见ると,図4のようにくしゃみ,鼻汁过多,鼻闭,鼻掻痒感,
と症状のほぼ3分の4が鼻の症状でした.とくにくしゃみ,鼻水で约半数以上(51.5%)を占め
ていました.次に多いのが眼の症状で,眼のかゆみ(眼掻痒感)が24.7%でした.(図4)
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さらに,鼻の症状と眼の症状の组み合わせのパターンをみると,鼻症状と眼症状を伴う人が花
粉症の症状をともなう人の全体で65.4%でした.その次に鼻症状のみ,眼症状のみの顺となりま
した(図5).これらは一般の患者さんととくに大きな违いはありませんでした.
3) 治疗状况
花粉症の症状を伴う人の治疗状况について调査しました.
症状を认める人613名のうち,53.2%が何らかの治疗を行っていたと答えていました(図6).
さらに,症状别に治疗の有无をみると,鼻症状と眼症状を伴う人は60.1%が治疗を受けていまし
た.眼症状のみでは48.5%が,さらに鼻症状のみの场合は37.1%が治疗を行っていました.
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この倾向は一般の患者さんでは,鼻の症状を持つ人に治疗を受ける倾向が高いのですが,眼の
症状のみで受ける人の割合が航空机乗员に约半数と高いのは,やはり职业上,眼の健康に注意を
払う必要があることを示唆しているのかもしれません.なお,治疗を受けていなかった人の理由
としては,症状が軽かったからとする人が94.2%を占め,その他では我慢した(4.5%)などであ
りました(図7).
治疗の状况としては,医疗机関を受诊した人が45.2%,市贩薬を使用した人が41.8%で,医疗
机関を受诊してさらに市贩薬を使用した人は33.8%でした(表3)
市贩薬使用
ハイ イイエ 计 医
疗 ハイ 33.8%11.4%45.2%
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イイエ 8.0%46.8%54.8% 机
関 计 41.8%58.2%100%
表-3 有症者治疗状况 (N=613)
医疗机関受诊者の治疗内容としては,点鼻薬(38.3%),点眼薬(27.8%),内服薬(25.8%)
でした(図8).つまり局所の治疗薬が半数以上になりますが,四分の一の方は内服薬を使用し
ているということです.
市贩薬使用では,内服薬が最も多く(37.4%),次いで点眼薬(34.0%),点鼻薬(26.5%)の
顺でした(図9).
以上の内容をまとめますと,今回のアンケート调査结果から,航空机乗员には春の花粉症の时
期に症状を有する人が约4人に1人の割合(约25%)で认められました.この割合を仮にスギ
花粉症の有症率とするならば,一般の集団(10~20%)と比较しても决して少なくはありま
せんでした.ただし,今回の调査はあくまでもアンケート调査のみの结果であるため,症状の中
には感冒やハウスダストアレルギーあるいはその他の花粉症症状が含まれている可能性があり
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あます.可能であれば,血清中のスギ特异IgE抗体価の测定等をあわせて行うことが実体の把握
になると思われます.また,花粉症の症状のある人では,症状の程度には个人差がありますが,
治疗を必要とする者が少なからずいると思われました.
ここで注意すべきことは,治疗として局所の点鼻薬や点眼薬は眠気とか覚醒を低下させるもの
はありませんが,アレルギー性鼻炎の内服薬はほとんどのものが眠気をきたします.したがって,
当然,搭乗の24时间以内のアレルギー性鼻炎の内服薬は,搭乗前の服用制限の対象薬になると
いうことです.ぜひこの点は留意していただきたいと考えます.
6.参考文献
花粉症 からだの科学 193巻 26~179;1997
スギ花粉症 治疗 79巻 6~139;1997
アレルギー性鼻炎 花粉症の诊断と治疗 メディカルレビュー社 1997
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